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第224話 休息 13-3
「えーと、寝顔を覗かれるのが嫌だった?」
「別に」
「じゃあ、寝てるあいだに触るから寝苦しかった?」
「……」
困惑したように僕を見ていた藤堂の顔が急に赤く染まる。それは薄暗い部屋の中でも十分にわかるほど。
「本当になにをしてるんですかあなたは」
「え?」
苦虫を噛み潰したような藤堂の表情に戸惑っていると、ふいに藤堂の手が伸びて僕の髪を優しく撫でる。
「ものすごく試されてるような気がします」
「なにを?」
「色んなこと」
藤堂の言っている意味がわからず眉をひそめれば、いつものように彼は困ったように笑う。時折こうしてひどく戸惑ったような、なんとも言いがたいような顔を藤堂はする。その表情の裏側はどんなに目を凝らしても見えて来ず、藤堂に関してはまったくその心が読めない。
「そうやって、お前がすぐ言葉を濁すからわからないんだよ」
半ば八つ当たりに近いが、そう言って口を曲げると、藤堂は急に空いた片方の手で僕を引き寄せた。
「確かに、佐樹さんはちゃんと言葉や行動に起こさないと、わからないかもしれないですね」
「どういう、意味」
言いかけた言葉が背中への衝撃で喉奥に詰まる。実際は藤堂が支えてくれていたのでそれほどではなかったが、それでも急な視界の変化に僕はただひたすら目を白黒とさせていた。
「こういう意味」
突然天井が目の前に広がり、状況が読めないまま目を瞬かせている僕の視界に、今度はそれさえも覆う影が落ちた。そして苦笑いを浮かべた藤堂の顔が僕の目に映る。
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