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第225話 休息 13-4

「え、とこれは」  鈍い頭をフル回転させて状況を把握しようとする僕を尻目に、藤堂は僕の髪を梳き頬を指先でなぞる。その仕草に息を飲んで固まっていると、次第にその手が首筋まで下りて藤堂の顔がゆっくりと近づく。 「ちょ、っと待った」  やっとのことで悟った僕は慌てて藤堂の顔を押しとめた。そしてそんな僕の抵抗を予測していたのか、藤堂は然して驚いた様子もなくすぐに離れていった。 「少しはこういうことも頭の片隅で構いませんから、意識してくださいね」 「あ、そ、うか……悪い」  急激に心臓が激しく脈打ち始めて息が詰まる。けれど藤堂はそんな僕を見下ろし小さく笑うと、今度はなだめるように優しく頭を撫でてくれた。 「あんまり俺の理性を焼き切るような可愛いことしないでください」 「し、してない。そんなこと」 「嘘つき」  ふっと息を吐き眉を寄せた藤堂に慌てて訂正するが、ますます苦笑いを浮かべられた。 「落ち着かない?」 「え、なにが?」  じっと目を見つめられたまま見下ろされていると、いまにも心臓が壊れそうだ。けれどそんな僕の心情をよそに藤堂は至極優しく微笑む。 「ずっと寝付き悪そうだったから」 「起きてたのか!」 「佐樹さんが最初に寝付くまでは、ね」  慌てて飛び起きそうになった身体を抑えられ、僕の背中は再び布団の上に落ちた。そのまましばらく瞬きを忘れて藤堂を凝視していると、なぜか藤堂は僕の隣で横になる。

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