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第227話 ランチタイム 1
いつもは準備室にこもってしまいがちな昼時。今日は珍しく外に出ている。そこは以前、三島に連れられてきた食堂裏のカフェテラスだ。ただそこのテーブルは少し手狭だったので、校舎から離れた芝生でシートを広げ、天気もよくちょっとしたピクニック気分。
「楽しそうですね」
ほんの少し浮かれた僕の気持ちを感じ取ったのか、横並びに座っていた藤堂が目を細めて笑った。普段は藤堂が一人分の弁当を作ってくれるのだが、時々三島たちを含めて一緒に食べることがある。
「と言うか、西やん最近お昼時はご機嫌だよね」
「そうか?」
藤堂の笑みと彼の手の動きを目で追っていた僕に、真向かいに座る三島が至極楽しげに笑った。言葉の意味があまり理解できず首を傾げると、さらに声を上げて笑う。
「ご飯待ってる雛みたい」
「雛?」
「食べることに積極的になってくれたなら、俺の苦労も報われますけど」
楽しげに笑う三島と小さく笑った藤堂が、人の顔を覗きながら笑い合う。ますます首を捻れば、目の前に箸を添えた皿が差し出された。
「これ、先生の分。ほかに食べたいものあったら言ってくださいね」
目の前に広げられた重箱から、藤堂が一通りの料理を移してくれる。その皿を見下ろして、僕はふといつものように浮かぶ疑問を口にした。
「なんでわざわざ取ってくれるんだ」
「それは先生が遠慮体質だからです。黙っていたら箸を出さないでしょう? それにこうしないと、ほとんど食べないうちになくなっちゃいますよ」
一瞬だけ苦い顔をして固まった藤堂に目を瞬かせると、小さなため息をついて肩をすくめられる。
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