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第228話 ランチタイム 2
「うーん、まあ」
確かに藤堂の言う通り、僕は率先して弁当に箸を伸ばすタイプではない。そして育ち盛りが集まれば一見多いのではないかと思うそれも、あっという間になくなる。それにしても自分で言うのもなんだが、相変わらず藤堂に甘やかされている気がする。
「ありがとう」
「どういたしまして」
「じゃ、いただきます」
僕の言葉を合図に三島の手が動き出す。藤堂が用意してくれているこの弁当の半分が三島の胃袋に収まるのは、いつものことだ。
「なあ藤堂」
「なんですか?」
「朝きつくないか? 毎日じゃなくてもいいぞ」
毎日こうして美味いご飯が食べられるのはありがたいが、朝が弱い藤堂に無理をさせるのも気が引けていた。
「大丈夫ですよ。最近はずいぶん慣れましたし、そのおかげか結構調子もいいみたいなので」
「ふぅん」
規則正しい生活になって体調がよくなったのだろうか。
「優哉はいままでが不規則過ぎだったのよ」
「え?」
笑みを浮かべる藤堂を訝しげに見つめていると、背後から呆れたような声が聞こえてきた。その声に首を傾げ振り返れば、小さなビニール袋を携えた片平が立っている。
「ん、片平? どこに行ってたんだ?」
いつもならばみんな揃って食事をするのに、お昼の休憩が始まり既に十五分ほど過ぎていた。
「はい、これ先生にお土産」
「なんだ」
のんびりと近づいてくる片平は手にした袋からなにやら取り出し、残ったものを僕の目の前に差し出す。受け取ったビニール袋を覗き、その中のものを見て僕は目を丸くした。
「シュークリーム?」
袋の中で小さな白い箱の口が開いていて、その中身がひと目で見て取れた。個別包装された綺麗な狐色のそれは、購買で売っているシュークリームだ。近くのケーキ屋が納品しているので購買商品と言っても侮れなく、生徒の人気も高いものだ。
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