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第233話 引力 2
ちょっと雰囲気とか顔立ちが藤堂に似てるんだよな。結局、彼を覚えた理由はそんな不純極まりない理由だ。
「今日はやけに女子が騒がしいなぁ」
「ああ、ちょっとうるさいですよね。好きだ、嫌いだ、振った振られたでよくもまあ、あれだけ盛り上がれますね」
「……お前、歳のわりにクールだよな」
「そうでもないですけど?」
柏木の言う通り確かに、一喜一憂するそのテンションは少し戸惑うほどだ。しかし僕の言葉に肩をすくめて、どこか冷めたようにほかの生徒たちを見ている柏木を反応は、子供は子供らしくとも思えてしまう。これは歳を取った証拠だろうか。
「ほんとに欲しいものは、あんなに簡単に諦められるもんじゃないってことです」
「奥が深いな」
湯気立つ珈琲を啜りながら柏木を横目で盗み見れば、騒がしい生徒たちを見ている視線がもっとどこか遠くを見ている気がした。
もしかして、柏木にも誰か好きな人とかいるのか。大人っぽい顔立ちの中にもまだどこか少年らしさのある柏木は、どちらかと言えば美少年。黙っててもモテるタイプに見えるけど。
「センセ、俺にも寄越せ」
「うわ、こら! 人のもの盗るな」
突然聞こえたのんびりとした声と、ずしりと重たくなった背中に気づいた時には、手にあった紙コップはいずこかへと消えた。声がした頭上を見上げれば、にやりと笑う峰岸の姿があった。
「お前なぁ、なんでそう人を見るたびすぐのしかかる。お前は背後霊か」
「こう、思わず抱きしめたくなる背中をしてるんだよな」
そう言って背後から伸びた腕が人の身体を抱きかかえ、それと共に峰岸の顔が頬に擦り寄る。
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