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第244話 Feeling 1-2
「これからあいつのバイト先に行くから、一緒に行こうぜ」
「なんで?」
「この書類を届けに、それに見たいだろう? 藤堂の仕事ぶり」
僕の言葉に含まれた二つの問いかけに、峰岸は躊躇うことなく答える。
「なんだそれ」
そしてそんな彼がひらひらと振った、学校の名前が印刷された茶色の封筒を僕は訝しげに見つめた。するとなぜか峰岸は不思議そうな顔をして首を傾げる。
「俺、センセに説明してなかったか? 当日使う料理はあいつのバイト先で用意して貰うんだぜ。これはその契約書」
「え? そうなのか」
「ああ、いくつか候補あったんだけどな。結局あそこになったんだよ」
驚いた顔をする僕に対し、峰岸は苦笑いを浮かべ肩をすくめた。そしていまだぼんやりしている僕の手から、さり気なく書類の束を攫っていった。
「あ、悪い」
普段は傍若無人な振る舞いをする峰岸だが、やっぱりなに気に気遣いのできる男だ。なにも言わずに歩いていく背中を見ながら、思わず感心してしまう。
「お先に失礼します」
委員会の書類をまとめ、会議室の鍵を所定の場所へ戻した。そして職員室内に目配せし、残っている先生たちへ挨拶をすると、僕は職員玄関を抜けて生徒が利用している正面口へと向かった。
「あ、いた」
扉の辺りへ視線を向ければ、柱にもたれた峰岸の後ろ姿を見つけた。
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