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第245話 Feeling 1-3
「……」
しかしその後ろ姿に声をかけようと踏み出した足が止まる。どこからともなく現れた女子生徒の集団に囲まれ、峰岸は携帯電話をいじっていた手を止めて、ゆっくりと顔を持ち上げた。
「相変わらずハーレムだな」
誰かといる時は遠巻きで見ている子たちがほとんどだが、なぜか峰岸が一人になった途端に蟻が群がるように彼の周りに人垣ができるのだ。
「センセ」
「あ、ああ、悪い待たせた」
しばらく黙って彼らのやり取りを見ていると、僕の視線に気がついたのかふいに峰岸がこちらを振り返った。それに合わせて僕が片手を上げれば、彼を囲んでいた女子生徒たちは皆一様に峰岸に手を振り去っていく。
さーっと一瞬にして人が散っていくその様子は、何度見ても不思議な光景だ。
「どうしたセンセ。なにぽかんとしてんだ」
校門に向かって歩き始めた僕の後ろを、のんびりとした足取りで付いてくる峰岸が首を傾げる。
「いや、なんとなく面白いなぁと思って」
なに気なく彼女たちが去っていった先を振り返り、目を瞬かせれば、僕が言いたいことがわかったのか、峰岸はふっと口の端を緩めて笑った。
「ああ、一年の終わりに藤堂がキレたからだろ」
「は?」
「いまはこんなだけど、以前はところ構わずな感じだったんだぜ。朝、昼、放課後。歩けば後ろに列ができる。教室にいれば見世物状態で、さすがのあいつもキレてさ。一人の時は構ってやるけど、それ以外は鬱陶しいから寄るなってことになってんの。基本的にあいつは近寄るなオーラがあるけどな」
思い出し笑いなのか、突然噴き出すように笑った峰岸に目を見張ってしまう。一体どんな剣幕で怒ったのだろうか。
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