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第247話 Feeling 1-5

「なんでって」 「普通、好きな奴にそんなこと言うか?」 「……それ、センセが言うなよな。あいつが告らなきゃ、いまはないんだぜ」  心底呆れたような眼差しと大きなため息。峰岸の反応に我に返れば、自然と顔が下を向いてしまう。そしてデリカシーの欠片もない自分の発言に自己嫌悪をした。 「センセらしいっちゃ、らしいけどな。別に気にすんなよ、センセがOKした時点で諦めた」 「諦めた?」  本当に? 簡単に諦めてしまえるような気持ちではない気がする。  なにかと僕に構うのは、藤堂の気を引くのが本音だろうし、気がつけばいつも峰岸は藤堂ばかりを目で追っている。同じ相手が好きな分、どうしてもそれに気づいてしまう。 「怖い顔すんなよ。それに言っただろ。俺はセンセも好きだって」  訝しげな顔をして見上げた僕に、峰岸は珍しく含みのない優しい笑みを浮かべる。その表情に驚いて僕が目を丸くすれば、ふいに屈んだ峰岸が呆けた僕の額に口づけた。 「俺にとったらセンセもあいつも大事なんだよ。別れさせて泣かせるのは本意じゃない」 「なんで、だ」  峰岸から見れば自分は、好きな相手を横盗る恋敵なのに――それなのに、なぜ好きだなんて言えるのだろう。 「ん? ああ、センセが可愛くて……いい人過ぎたからだろうな。泣くほど嫌なことされてんのに、またそんな奴のこと信じるような人なかなかいないぜ」  皮肉めいた峰岸の笑みに、カッと頬が熱くなる。確かに危機感はないし、馬鹿みたいだとは思う。

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