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第248話 Feeling 1-6
「でも、お前、本気じゃなかったし」
「そこそこ本気だったけど。嫌な思いしたら、引くかと思ったんだけどな。しぶとかった」
「嘘つけ、からかっただけだろ、お前……だから峰岸は、ほっとけないと言うか」
怖い思いはさせられたが、正直あのおかげで、藤堂が自分にとって特別だと気づいた。それに、峰岸は手はかかるが憎めないと言うか。
「なんか弟がいたらこんな感じかな、と」
「……へぇ、弟ね」
しどろもどろな僕にぽつりと呟いた峰岸の顔が、またいつものように楽しげな笑みを浮かべた。
「な、なんだよ」
「いや、なんでもない」
「お前、変な悪巧みしてないだろうな」
「さぁ?」
肩をすくめてにやりと笑った峰岸は、疑いの眼差しを向ける僕に背を向けてスタスタと歩き始める。コンパスの長さも相まってそれを追いかける僕は、嫌でも小走りになってしまう。
「お前、絶対いまなんか悪知恵が働いてるだろ」
「センセ、早く来ないと置いてくぜ」
「こら、待て」
笑う峰岸の背中を追いかけながら、諦めた――そう口にしてくれたことに、なによりほっとしてしまった自分の大人げない気持ちに呆れてしまう。けれど僕はそんな峰岸のさり気ない優しさに感謝した。
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