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第251話 Feeling 2-3
「マネージャー! 一真くん!」
「瑛冶うるせぇ、用があるならこっち来い」
「やべ、久我さんがキレた」
声が響いた途端、間髪入れずに返ってきた声に三木さんは肩を跳ね上げて苦笑いを浮かべる。そして困ったように頭をかきながら僕と峰岸に目配せすると、彼は手招きをして先ほど開いた扉を示す。
「うちの料理長、おっかないから。ちょっといま忙しいっぽい」
「相変わらず、めんどくせぇジイさんだな」
三木さんの言葉にため息をつくものの、峰岸はさして気にした様子もなく扉の奥へ入っていった。状況が飲み込めずにいる僕は、仕方なくそのあとへ続く。峰岸は廊下を一本挟み、さらに向かいにある開け放たれた入り口へ消えた。
「大丈夫、別に捕って喰われないから」
にこにこと笑みを浮かべる三木さんに促されながら足を踏み入れれば、そこは調理場のようで、三木さんと同じようなコックコートを着た人たちが慌ただしく動き回っていた。そしてその中でよく見慣れた背中も見つけた。
「よお、一真。いいとこに来たな。ちょっと手伝っていけよ」
「ああ? 誰がそんな面倒くさいことするか」
「バイト代は出すって……あ、れ? こちらはどちらさん?」
ぼんやりと背中を見ていると、峰岸と話をしていた男の人がこちらに気がついたのか、目を丸くしながら近づいて来た。
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