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第259話 Feeling 4-2
「あれは、あいつがなにかと佐樹さんに構うからであって」
「ん、わかった」
「なにがですか」
暗い顔をしていた僕が、急に笑みを浮かべたことで、ますます藤堂の表情が戸惑ったように強張る。そんな彼の反応に僕はつい苦笑いをしてしまった。
「いまは藤堂の優先順位。一番は自分なんだってわかった」
けれど、多分以前は峰岸だったのではないかと思う。僕が藤堂の隣に立つまでは――そうでなければ、お互いの想いを知ったまま長く一緒にはいられない。そして峰岸が手を離さなければ、きっと藤堂はここにはいなかった。それを思うとたまらなく胸が痛い。
その痛みが自分に対してのものなのか、峰岸へのものなのかはわからない。でも僕は、どうしても確かめたかったのだ。
「いい、もう満足した」
「佐樹さん。一人で完結しないでください」
「知りたかっただけだ。お前の一番がいま、本当に自分なのか」
馬鹿馬鹿しいと笑われても構わない。これだけ想いを与えられて、まだ信じられないのかと罵倒されてもいい。
「……過去はいらない。だからいまのお前は、自分だけのものだって、確かめたかったんだ」
藤堂を想う自分の気持ちはもう心から溢れて、どうしようもないところまで来ている。だから何度も何度も確かめても、きっと足りない。またいつか同じことを彼に問いかけてしまう。
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