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第260話 Feeling 4-3
一分一秒先の藤堂の気持ちを確かめてしまう。
「女々しくて情けないけど。お前じゃないと駄目なんだ。だから」
はじまりからそうだった。なぜそんなに追いつめられてしまうほど、彼の気持ちが欲しいのかがわからない。でもどれだけ一緒にいても不安が過ぎる。
多分どこかで恐れている。置いていかれるのが、怖い。手が届かなくなるのが怖くてたまらない。
「落ち着いて、ちゃんと聞いてください。そして絶対に忘れないでください。俺が愛してる人は、昔もいまもこの先も佐樹さん、あなただけです。それ以外なんてないんです」
「……ん、ありがとう」
そう言って優しく抱き締められたら、もう言葉なんて見つからない。ひたすら頷いて泣くしかできない。
「大丈夫ですよ。あなたは俺のすべてです」
しばらく時間を忘れて藤堂の胸元に顔を埋めていると、その向こうから鈍い音が数回聞こえてきた。
「お取り込み中悪いけど」
微かに聞こえるその声に気づき、藤堂が寄りかかっていた扉から退けば、軋んだ音を立ててそれはほんのわずかに開いた。
「ジイさんがそろそろ戻れってよ。ミキティじゃ使えねぇってブツブツ言ってるぜ」
細く開いた隙間から聞こえる峰岸の声に、藤堂は肩をすくめて小さく笑う。
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