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第261話 Feeling 4-4

「俺、もう行きますね」 「悪い、仕事をサボらせた」 「大丈夫」  言い募ろうとした僕の口を唇で塞ぎ、やんわりと微笑んだ藤堂は、髪を撫で静かに離れていった。開いた扉の隙間から射し込んだ光に一瞬目が眩む。 「ちゃんと送れよ」 「わかってる。さっさと行け」  峰岸に追い立てられながら去っていく藤堂の後ろ姿を見ていると、ふいに光を遮るような影が落ちる。 「センセ、目が赤い。泣かされたのか」 「ち、違う」  僕の顔をじっと見ていた峰岸が、指先で目の縁をなぞり眉をひそめた。慌ててその手を払えば、なぜか小さくため息を吐かれる。 「泣かされたら言えよ。叱ってやる」 「馬鹿なこと言うな。藤堂はそんなことしない」 「だろうな。あいつセンセにべた惚れだし。つうか盲目だぜほんとに」  顔をしかめた僕に、楽しげな笑みを浮かべ峰岸は片頬を持ち上げる。 「いまも昔もあいつの一番はセンセだけだ。だから、俺はそんなあいつとセンセのあいだに割り込んで楽しく過ごすから、気にすんな」 「は?」 「俺は二人とも、好きだって言ったろ? 両方構えて一石二鳥だ」  あ然としている僕に、わざとらしく片目をつむると、峰岸はニヤニヤと含み笑いをしながら、扉の向こうへ消える。そして慌てて僕が扉を開けば、峰岸は目を細めにやりと笑った。 「恋愛には障害がつきものだろう?」  その笑顔が冗談なのか、本気なのかはわからないが、間違いなく彼の猫じゃらしになったような気はする。 [Feeling / end]

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