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第265話 邂逅 1-4
「そうか、そういえばお前の家は、お父さんと中学生とまだ小さい弟の四人だったな」
「うん、うちの母さんは産後のひだちが悪くて、一番下の弟が生まれてすぐに。だから男ばっかりで暑苦しいんだよね」
「それならうちは、女ばっかりで肩身が狭いぞ」
三島の柔らかい和みのある雰囲気は、男だらけとはいえ相当な癒やし要素だろう。彼が怒った姿はまだ一度しか見たことがないけれど、家ではやはり厳しかったりするのだろうか。
「どしたの? 俺の顔になんかついてる?」
気づいたらじっと三島の顔を見つめていた。その視線にものすごく怪訝な顔をされてしまった。
「いや、三島の普段ってどんな風かと思って」
三島は藤堂や片平といる時でさえ、いつも一歩後ろで見守っているような雰囲気がある。それはどこか父親や母親みたいな包容力だ。
「家ではさすがに怒鳴ったりもあるよ? すぐ下の弟はどんどん生意気になってくるし、一番下はまだ小さいから目を離せないし」
下の弟たちを思い出したのか、三島の眉間にしわが刻まれる。自分は下に兄弟がいないので、その気持ちを残念ながら理解してやることはできないが、なんとなく大変そうなのはひしひし伝わってくる。
「そうか、いい兄ちゃんだな」
さり気ない三島の気遣いや優しさは、藤堂のとはまた少し違った感じで、つい安心し過ぎて涙腺が緩むこともある。背も高いし、手も大きいし、少しだけ記憶の隅に残っている父親みたいな温かさを感じるのかもしれない。
いま思えば自分は長男で末っ子だったから、父親に甘やかされてたんだな。昔を思い出して少し気恥ずかしくなった。そしていつも三島や片平に世話を焼かれているそのわけが、なんとなくいまわかった気がする。
自分は甘やかされるのに弱い完全なる末っ子体質なのだ。そんなことを今更思い知って肩ががっくりと落ちてしまった。
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