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第268話 邂逅 2-3

「あ、お母さんからメールだ。弥彦ちゃんのご飯はどうしますかって。いらないんだよね?」 「うん、大丈夫。今日は父さん遅いしうちで食べるよ」 「あーもう、うちのお母さんと弥彦のお父さん、早く再婚しちゃえばいいのにね。面倒くさいったらない」  震えた携帯電話を開きぶつぶつと呟いていたが、片平は鞄を肩にかけるとくるりと身を翻した。そしてこちらを振り向き大きく手を上げる。 「それじゃ、お先に!」 「ああ、気をつけて帰れよ」  いつものように慌ただしく駆け出した後ろ姿に、思わず苦笑いが浮かんでしまう。しかし片平はなにかを思い出したのか、小さく「あっ」と呟くと戸口で立ち止まった。その様子に首を傾げれば、くるりとスカートを翻しながら再びこちらを振り返る。そして僕にまっすぐと指先を向けて笑みを浮かべた。 「先生、今日のご褒美が机の上にあるから持って帰って! じゃあね!」 「え? あ、ああ」  楽しげな表情を浮かべ、笑いを堪えるようにして口元に手を当てた彼女に、思わず首を捻ってしまった。片平があの仕草をする時はいつもなにかを企んでいることが多い。 「ご褒美ってこれかな」 「ん?」  三島の声に振り返ると、右手に透明なシートで包装された小さなお菓子。左手には淡いピンク色の封筒を持っていた。 「これなんだ」 「さぁ?」  お菓子はともかく、封筒の中身がわからない。僕が首を傾げれば、三島もまた不思議そうに首を傾ける。しかしここで顔を突き合わせていても仕方がないので、受け取った封筒を開けてみることにした。

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