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第269話 邂逅 2-4
「あ、写真……って、これ若干、盗撮気味な気がするのは気のせいか?」
封筒から出てきた写真には、いまやすっかり見慣れた藤堂の姿が映っていた。誰かと話しているところなのだろうか。その表情は普段自分が見ている笑みとは少し違って、ちょっと新鮮だ。
「ん、多分。気のせいじゃないかも。またこんなの撮ってるんだ、あっちゃん。昔から優哉の隠し撮りを、一枚五十円とかで売ってたんだよね」
「なにをしてるんだあいつは」
片平らしいと言えばらしいのだが、それに需要があるのが正直少し気に入らない。やっぱり昔から藤堂はモテていたんだろうな。
「そういえば」
「どしたの」
「藤堂って確か、一人っ子なんだよな。あまり家族で食事したことないって言ってたけど」
いままで家族の話をしていたせいか、ふいに藤堂がうちへ泊まりに来た時のことを思い出した。みんなで集まって話したり、食事をしたりするそんな些細なことが本当に楽しかったと言っていた。
「ああ、優哉のお父さんもお母さんも忙しい人なんだ。だから小学校くらいまでは、よくみんなであっちゃんの家に集まってたんだけど。……中学になってからは」
「なってからは?」
急に口ごもった三島を見つめると、なぜか困ったような顔で見つめ返される。
「うーんと、なんて言うか。あんまり俺たちにも、自分の家にも寄りつかなくなっちゃって」
「反抗期?」
いまの藤堂からはまったく想像はつかないが、思春期ともなれば誰しもそんな時期はあるものだ。けれど複雑過ぎる三島の表情を見ると、なんとも言いがたい気分になった。
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