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第273話 邂逅 3-3

 のんびりした雰囲気と、なんとなくはっきりものが言えない性格。悪い先生じゃないけれど、いいように扱われ易い。 「どこ?」 「生徒会です」 「……え?」  思わず飲みかけたお茶を噴き出しそうになった。よりによって生徒会とは、また面倒ごとを押し付けられたものだ。そういえばいまの顧問の先生は、結婚を機に退職をするのだった。 「まあ、忙しいけど。いい経験にはなるんじゃないか?」 「とは思うんですが」 「やって見ないと始まらないし、いまの生徒会はみんないい子が多いから大丈夫だよ」  多分、顧問などいなくともしっかりやってくれそうな子たちばかりだ。 「あ、ちょっとごめん」  突然鳴り響いた呼び出し音に僕は片手を上げて、こちらを見ている間宮を制した。 「はい、西岡です。……はい、え? はあ、まあいいですよ」  なんとなく煮え切らない返事をする僕に、念を押す電話の向こう側はひどく騒がしく、ここは本当に隔離された平和な場所だと思った。 「間宮先生、逃げて来ただろ。職員室すごい慌ただしい雰囲気だった」  受話器を戻して、僕は間宮に目を細めて笑う。 「え、あ……実は、それに私がすることあまりないですし」 「ふぅん」  じゃあ、ここにいるのはあぶれた二人と言うことか。 「教頭先生ですか?」 「ん、そう。ほら今度、一般入試あるだろ。人手が足りないから、それの試験官をやって欲しいって」  まあ、ほかになにもしていないのだから、これくらいはしないと罰が当たる。  早いもので僕が以前、担任に就いたことのある生徒たちは、今年の卒業生で最後だった。クラスを持たされるのは大変だったが、その分楽しく思い出も多く残った。でもいまはまだしばらくのんびりしていたい。

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