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第286話 邂逅 6-2

「うちのだ」 「え?」  急にぼそりと呟かれたその言葉の意味がよくわからず首を傾げて見れば、ふいに顔を上げた彼がなぜか僕の頬に手を伸ばして来た。 「な、なんだ?」  突然冷えた身体に与えられたその温もりに、思わず肩が跳ねる。そしてどれほど自分の身体が冷え切っていたのか、それを思い出してしまった脳みそが、途端に寒さを認識して一気に足元から震えが上がってきた。 「う、寒っ!」 「随分と冷たいな。いつまでもこんなところに突っ立ってると風邪を引く」  冷えた僕の頬に手を当て呟く彼の声は、素っ気ない物言いだったが心配してくれているのはなんとなく伝わる。優しくてよく通る綺麗な声だ。 「ん?」  ぼんやり彼の声に聴き惚れていると、ふいに右の手に温かさを感じ僕は目を瞬かせる。頬から離れた彼の手が、いつの間にか僕の指先を包み込むように握っていた。 「手、痛くないか? 赤くなってる」 「えっ、あ、うん……少し」  眉をひそめた彼が冷え切った僕の指をなぞる。確かにその指先は冷たいというより、既に痛いというほうが正しい。  温めるように指先を擦り合わせる彼の手に、不思議と先ほどのような不快感はなかった。 「……あの」 「なに?」 「あ、いや」  なにも言わずただ手を握っている彼に思わず声をかけるが、彼は僕の問いかけに小さく首を傾げるだけだった。しかし言葉が見つからず口ごもっている僕に目を細め、急に彼は手を離し再び冷えた頬に触れる。

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