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第287話 邂逅 6-3

「このままだと、雪だるまになるよ。人を待ってるなら、下で待てば?」  僕に降り積もっていた雪を払う彼の手を、戸惑いながらも思わずじっと目で追いかけてしまった。初対面の人間にここまで容易く触れられるのは初めてだ。少しは嫌悪してもいいと思うのだが、やはり顔が整っている人は得だなとしみじみしてしまう。 「誰か、待ってたんじゃなかった?」 「あ……いや、すぐ戻るって言っていたし、僕は君を探してたから、もう用は」 「俺?」  首を大きく振った僕の顔を見つめる彼は訝しげな表情を浮かべた。その反応にライターを握った彼の片手を指差すと、今度は小さく肩をすくめて息を吐く。 「残念、少し期待したのに」 「は? なにを」  ぽつりと呟いた言葉の意味がわからない。眉をひそめて彼を見上げれば、ふっと苦笑いを浮かべられてしまった。 「彼氏、遅いな」 「え、いや、ちがっ。そんなんじゃない」  なぜそんなに慌てたのかわからないけれど、僕はふいに後ろを向いた彼の腕を思わず掴んでしまった。 「それ、天然?」 「な、にが?」  振り向き目を瞬かせた彼が小さく首を傾げ、それにつられるようにして僕も首を傾げる。するとひどく困惑した面持ちで彼は再び苦笑いを浮かべる。 「気をつけたほうがいい。また悪い男に引っかかる」 「それは、どういう意味だ?」 「……こういう意味」  意地悪げな表情で目を細めた彼に驚いていると、ふわりと柔らかな香りが鼻先を掠める。

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