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第294話 邂逅 7-4
「いいんだって、あいつは下心ありありなんだから」
「なんだよ、その下心って」
「んなことより、早く食え」
のらりくらりとかわされ、明良はいつも渉さんのことに関して口を開かない。彼を自分と引き合わせたのは明良なのに、最初はこんなに邪険にしていなかったはずなのに。いつの間にかあまり僕と渉さんを引き合わせないようになった。まったく意味がわからない。
「なんでそんなに仲が悪いんだよ」
「俺らは最初から相性よくねぇの。それに俺を嫌ってんのは向こうだし」
「最初にお前がなにかしたんじゃないのか? 確かに渉さん好き嫌いはっきりしてるけど、あんまり根に持つタイプじゃないと思うけど」
嫌いというより、普段の渉さんは明良を極力避けている風にも感じられる。じとりと睨めばふいと顔をそらして明良は口をつぐんだ。
「……今度、渉さんから連絡が来たら繋げよ」
「わかったよ、あいつのことはもういいだろ。それよりとっとと風邪を治せよ」
「わかってる」
顔をしかめた明良の言葉に口を尖らせるが、額を何度も叩かれ口ごもるしかできない。
「面倒かけて悪いな」
「まったくだぜ。お陰でうちのからメールがひっきりなしだ」
「あ、あー、そっか。それはますます悪い」
苦笑いを浮かべて明良が開いた携帯電話を見れば、ずらりと同じ相手からのメールが並んでいた。長続きしない明良がいまの相手と付き合って半年ほどになるが、相変わらず僕は彼に目の敵にされている。それだけ明良が好きなのだろうけど、自分と明良の距離感は昔からこんな感じだ。
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