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第295話 邂逅 7-5

 それにいままでの子たちはいくら僕と明良が親しくても、友人と恋人の定義を割り切っていた。なので最初はその反応に大いに戸惑ったものだ。 「まあ、これはこれで可愛いから気にすんな」 「ふぅん、そうか」  本当に明良は付き合い始めると人が変わる。遊ぶ相手にはすごくいい加減なのに、相手が恋人となれば途端に性格が円くなる。と言うか――とにかく甘い。  でもなぜかいつも長続きしないのだ。なので今回の彼は、随分と長いほう。 「……なぁ、やっぱり男同士って難しいか?」 「なんだよ急に」  携帯電話をいじっていた明良がふいに顔を上げて首を傾げた。 「いや、なんとなく……気になって」  訝しげな顔をする明良に思わず苦笑いを浮かべてしまった。自分でもそんなことを聞いてどうするのかと思う。 「どうだろうなぁ、あんま男と女と変わんねぇと思うけど」 「そうか」  相手が異性か同性かの違いだけで、好きの気持ちは一緒なわけだから当たり前か。 「いままで同性以外好きになったことあった?」 「……俺はないけど、そういうどっちもって奴もいる」 「へぇ、じゃあその人たちは、性別の隔たりなく、相手を好きだって思えるんだ」  だとしたら、いままで異性しか好きになったことがない人間でも、同性を好きになるなんてことはあるのだろうか。 「佐樹……お前、熱にやられた? 変なのに引っかかってないよな?」  急に怪訝な表情を浮かべ、人の顔を覗き込む明良に身体が仰け反る。 「変なのってなんだよ」 「佐樹は意外とほだされ易いからなぁ。新しく恋すんのはいいことだけど、優しくされてもすぐ信じんなよ。お前は自分で気づいてないけど、甘やかされんのに弱いから」 「……」  しみじみと語る明良に言葉が出ない。いままさに、心辺りがあり過ぎて動揺してしまった。

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