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第300話 邂逅 8-5

「……いまお前は、わかんねぇことが不安なんだな。昔のことはともかく、会えるよきっと、お前はまたその人に会う。でなきゃそんな偶然、起きねぇよ」 「会えない」 「バーカ、会えないって思ったら会えなくなんの。会いたいんだろ、お前は。いいじゃん会いたいって思ってろよ。佐樹には幸せになる権利あんだから」 「ないよ」  彼女の手を離して、死なせてしまったのは僕だ。ちゃんとしっかり掴まえて、ちゃんと伝えていたら、あんなことにはならなかった。僕に誰かを想う資格はない。  でも、そう思うのに――明良の言葉が嬉しかった。本当は彼に、会いたいんだ。彼女がいなくなったあの頃に、多分出会っているだろう彼にもう一度、会って確かめたい。なぜこんなにも会いたいと思うのか。 「好きとかそんなことじゃないと思うんだ。でも、会いたいって、そんな風に思うのはおかしいか」  彼に対して愛おしいとか、そういう気持ちがあるわけじゃない。ただ会いたい、会いたくて仕方がない、本当にそれだけだ。 「いいや、別におかしかねぇよ。人の感情なんて言葉で推し量れるもんじゃない。頭で考え過ぎんな、佐樹の悪い癖だ」  震える僕の身体を落ち着かせようと、明良は小さく笑い強く抱きしめてくれた。そして背中をさする彼のそんな手の温もりに、ほんのわずか、なにかが脳裏を掠めていった。  ――あなたがすべてを捨てたとしても、誰も救われない。  ふいに頭の奥で聞こえた声と共に、突然さまざまな光景がフラッシュバックし始めた。

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