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第308話 邂逅 10-3

 どことなく少年っぽさを感じさせる顔立ちだが、切れ長の瞳に含まれる光は大人びていて、背の高い彼に見下ろされると思わずドキリとしてしまう。目の前にある瞳をじっと見つめる僕に、彼は少し困ったように笑った。 「ああ、知らないのは当然。俺が一方的にあなたを知ってるだけだから」 「……なんで?」 「六月十日、いまから四日前。あの日もいまみたいに死にそうな顔をしてた」  彼の口から出た日付に、心臓の辺りがひやりとして止まりそうになった。それはあの事故があった日だ。 「一人でいつまでも待合室にいたから気になって。それとその前に色々と話を聞いてしまったから、余計かな」  顔を強張らせた僕に気づいたのか、彼はすまなそうな顔をして僕の髪を優しく撫でる。その感触に彼女のぬくもりを思い出して、ひどく胸が苦しくなった。けれど思わず目を伏せたら、彼は繋いだ手を強く握りしめてくれた。 「ごめん、思い出したくなかったよね」 「……いや、大丈夫」  繋がれた手を優しく握りしめられて、張り詰めていた心臓がほんの少し緩やかな音に変わる。手のひらから伝わる温かさにひどく安堵してしまった。  彼は不可思議な雰囲気の持ち主だと思う。柔らかな笑みと彼の持つ穏やかな空気が、傍にいるだけで気持ちを落ち着かせる。 「君はそこで、なにをしていたんだ」 「……立ち聞きしたのは、怒らないの?」  僕の問いかけに、彼は不思議そうな顔で首を傾げる。確かに人の家庭の事情に首を突っ込まれるのはいい気はしない。でもそれよりも、なぜかいまは目の前にいる彼のことが気になった。

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