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第312話 邂逅 11-3
肩を押され引き離されると、じんわりと感じていた熱までなくなってしまう。心許ない気持ちで彼を見つめるけれど、彼は口を引き結び目を伏せた。
「……そうか、そうだよな、ごめん。いまのは聞かなかったことにしていいよ」
「なんで、いまのは嘘?」
少し泣きそうに歪んだ彼の表情に、ひどく僕は動揺した。とっさに彼の両腕を掴むが、拒むように身をよじられる。僕はまたなにかを間違えてしまったのだろうか。
「嘘じゃないけど、俺の想いはあなたに相応しくない。ごめん、気持ち悪かったよね」
「違う、そんなつもりで言ったんじゃない。嫌じゃない。ただ男の人にそんなことを言われるのは初めてだったから、だから」
彼のまっすぐな気持ちは、本当に嫌ではない。むしろ彼のぬくもりと優しさを感じて、できることならばもっと傍にいて欲しいとさえ思う。けれどしがみ付くように彼の手を握れば、僕の手を見下ろし困ったように笑った。そして僕の目をひどく悲しそうに見つめる。
「いま、寂しい?」
「え?」
小さな彼の声で、僕はその呟かれた言葉と表情の意味を知った。
「……ごめん、寂しい。すごく寂しいよ」
「仕方ないことだから、そんなに泣きそうな顔しないで」
再び優しく抱きしめてくれる彼に、胸が痛んで息が止まりそうになる。
彼は僕を好きだと言ってくれた。それなのに、僕は寂しくて傍にいて欲しいと言った。寂しさを埋めたくて、彼の気持ちと優しさにすがろうとしたのだ。
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