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第313話 邂逅 11-4

「でも、嫌じゃない。本当に僕はそんな風に思っていない」 「じゃあ、そうだな。もしこの先また俺とあなたが出逢えて、あなたがいまの寂しさを抱えていなかったら、もう一度言う。だからその時また、答えを聞かせて」  そっと僕の頬に口づけて、彼はなだめすかすように何度も背を撫でてくれた。そんな彼の優しさに、枯れていた涙が溢れそうになる。もしかしたらこれで最後になるのかもしれない。そう思ったら、離れてしまいたくないなんて考えさえもよぎる。 「それはいつだ」 「さすがにそれは、わからないけど」  問い詰めるような僕の剣幕に苦笑いを浮かべ、彼は少し思案するように首を傾げる。その瞳がこちらを向くまで見つめると、やんわりと温かい光を宿した目を向けられた。 「もしもいま、あなたがすべてを捨てて死んでしまっても、絶対に誰も救われない。だから俺はあなたには生きていて欲しいと思うよ」 「……それは生きてれば、会えるかもしれないってことか?」 「うん、すごく大雑把な約束だけどね」 「それでもいい。僕はまた、君に会いたい」  愛おしむような優しい目で、僕を見つめる彼がくれた小さな約束。それがたとえどんなに曖昧だったとしても、あの時の僕はそれが嬉しいと確かに感じた。彼への想いは寂しさから来るものだったかもしれない。それでも目の前にいる彼の存在が、その時なによりも色鮮やかに見えた。  いま思い返してみれば、あの時の僕たちには本当にお互いが必要だったのかもしれない。結局あの日の出来事を僕は一人で抱え生きて行くことができなかった。彼女に対する深い罪悪感と共に、生きて行くには重過ぎる感情と記憶を、心の奥底にしまい込んでしまった。  そして彼もまた、そんな記憶に紛れ僕の中から消えた。

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