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第314話 邂逅 12-1

 けれどまた、不思議な巡り合わせで彼と出会った。彼を想うとそれと共に彼女の記憶が甦って来た。似たところなどない二人だったが、あの日の出来事と彼が密接な関係だったからだ。そしてあの日のことを思い出してしまえば、雪の降った夜に僕が追いかけたのは、約束を交わした彼だったのだとすぐに気づく。  少し以前よりも大人びて、雰囲気や声質も変わっていたけれど、恐らく間違いない。でも、どうしたらまた彼に会えるのだろうか――そう思う心と、もう会わないままのほうがいいと、そう思う心が相反する。  彼がもう覚えていない可能性は大いにある。もし本当にそうだとしたら、やはり僕は彼に近づかないほうがいい。いや覚えていたとしても、知らない振りをしたままでいるほうが、彼にとって都合がいいかも知れない。  彼の幸せを壊すような真似だけは、絶対にしたくない。 「先生、西岡先生!」 「……っ」  ふいに肩を叩かれ身体が軽く飛び上がる。そんな自分の反応で我に返れば、いつの間にか紙を数えていた手が止まっていることに気づく。 「大丈夫ですか」  急にびくりと肩を跳ね上げた僕に驚いたのだろう。間宮が目を丸くしてこちらを見つめていた。 「ああ、間宮先生か。大丈夫、ちょっとボーっとしてた」  心配そうな顔で人の顔を覗き込む間宮に、僕は誤魔化すように笑って、手元の紙を数え直した。 「体調は大丈夫ですか? 倒れて病院に運ばれたって聞いたんですけど」 「ん、平気……風邪、こじらせただけ」  噴出した記憶と感情の断片にやられて、入院してましたとはさすがに言えない。しかしそのせいで今日も正直言えば危うかった。無理を言って昨日退院してきたのだが、まったく準備という準備に僕は携わっていない。

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