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第321話 邂逅 13-2
でも――彼を見つけられないのは当然だった。
写真に写る二人の藤堂は、あまりにも違い過ぎて、その事実を突きつけられなければ気づきもせず、こうして思い出しもしなかった。
「頭の中がぐちゃぐちゃだ」
写真をじっと見つめながら僕はひどく動揺していた。
あの時の彼と、藤堂が同一人物だとは思いもしなかった。あの時の藤堂に対する感情と、いまの藤堂に対する感情はまったく違う。でも傍にいて欲しいと思う気持ちも、会いたいと思う気持ちもそれに違いなどない。
「同じ? 同じってなんだ」
答えの出ない疑問に頭を抱え、落ち着きなく辺りに視線をさ迷わせれば、目の前を行き過ぎる人たちが不審そうな目をして僕を振り返っていく。
二年前の藤堂を思い出し、気づけば彼と出会った場所へ僕は来ていた。行き交うバスを見ながら、雪の日が思い起こされる。あの時、一瞬だけ目があったけれど、藤堂は僕に気づいていたのだろうか。
「でも……あの日の僕たちがあのまま一緒にいたら、きっといまのような関係にはならなかった気もする」
それこそ僕の中には親子か兄弟か、そんな情が湧いていたんじゃないだろうか。
二人のあいだにある空白の時間を寂しく思うが、いまの距離感を失うのはもっと寂しくて切ない。
「考え過ぎて頭悪くなりそう」
ぶつぶつと呟きいきなり立ち上がった僕に、周りの気配が微かに引いた。けれどそれさえも気に留めることができなくなっていた僕は、人波とは逆方向へ歩き出した自分の背後で、大きなため息をつく人物がいたことに気がつかずにいた。
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