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第322話 邂逅 13-3
「どこに行くの?」
ふいにかけられたその声に、身体が驚きで大袈裟なほど飛び上がる。その声の主は僕が振り返るのを待っているのか、じっとこちらを見つめる視線を背中に感じる。
「佐樹さん、どこに行くの?」
今度は名前を呼ばれ、思わず肩が跳ねる。手にしていた写真がくしゃりと歪んだ。
振り返らなくてはいけない。そう思っていても、身体が金縛りにでもあったように地面に縫い付けられ動かない。ここへ彼を呼びつけたのは自分だ。明らかに彼は僕の反応を訝しく感じているだろう。小さなため息が聞こえる。
「どうしたんですか」
「……っ」
ゆっくりと歩み寄ってきた彼の手が肩に触れ、僕の身体は小さく震えた。とっさに写真をポケットにしまうと、動揺を隠すように両手を握りしめる。そしてそれを感じ取ったのか、ほんの少し彼の気配が変わった。
「佐樹さん、こっち向いて」
強引に腕を引かれ、僕は否応なしに彼を振り向いてしまった。そして彼の、藤堂の目が大きく見開かれる。
けれど藤堂の驚いた顔が見えたのは一瞬で、次の瞬間には目の前にある彼の胸元に抱き寄せられていた。
「藤堂、ここバス停」
「知ってます」
忙しなく出たり入ったりを繰り返す駅前のロータリーは、行き交う人は絶えない。そんな降車専用路では、先ほどまで不審そうに僕を見て通り過ぎていた視線よりもさらにひどい。
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