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第324話 邂逅 13-5
せっかく再び出会えた彼が、またどこかへ消えてしまったことが辛かった。藤堂も同じように消えてしまったらどうしよう、そんな思いが不安を募らせた。バラバラだったいまと昔の記憶が結びついたことで、やっとそれに気づく。
「二度と忘れたりしないから……本当にもう、どこにも行くな。ずっとお前しかいないんだよ」
戸惑いの色を含み、瞳を揺らす藤堂の手を両手で握り、僕はそれを強く胸元に引き寄せた。
あの日からずっと、自分を支えてくれていたのは彼だ。たとえ記憶が奥底に押し込められようとも、どんなに記憶が薄れていようとも、彼を感じるだけで傍にいたいと思った。会いたいと思った。だからこそこんなに藤堂のことが好きだと思う。本当に忘れられない人は、彼女ではなく藤堂だったんだ。
「昔のことは覚えていなくてもいいから、いまと、この先だけあればいい」
いまがまた途切れてしまって、藤堂がいなくなったら――また忘れてやり直すなんて、きっともうできない。
「もしもお前がこの先、僕のことを好きじゃなくなったとしたら、その時はちゃんと言って欲しい。突然いなくなることは、もう絶対しないでくれ」
「……」
握りしめた手をゆっくりと解き、僕は立ち尽くす藤堂の背に腕を回して抱きついた。そして胸元にそっと頬を寄せれば、いつもよりもずっと早い心音が耳に響く。
彼のこの音は――いまも昔もずっと変わらない。この優しい音に僕は何度となく救われた。
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