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第332話 邂逅 15-2
「そういえば佐樹さん」
「ん?」
ふっとからかう声色が消え、藤堂の視線がこちらを覗き込んでくる。その声と視線に首を傾げながら見上げれば、彼もまた小さく首を傾げ僕を見下ろしていた。
「今日はずっとあそこにいたんですか? もう食事はしました?」
「いま、何時だ?」
先ほどの問いかけを頭で反すうして、僕はふと我に返った。
「二十二時半を少し回ったところですね」
背後でちらりと腕時計を確認しながら、藤堂はじっと僕の顔を見つめる。
「えっ? もうそんな時間か」
「すみません、バイトが終わるの今日に限って遅かったので。俺が駅に着いた時点で、もう二十二時を回ってましたから」
「いや、別にそれはお前が悪いわけじゃないし、今日は週末だから普通に忙しかっただろ」
ふいに申し訳なさそうな顔をした藤堂に慌てて首を振り、僕は小さく唸った。
「いますぐ帰れなんて、野暮なこと言いませんよね?」
「……う、えっと」
僕の唸り声に藤堂は少し不機嫌そうな顔をして目を細める。そしてそんな彼の表情に僕は、たじろぎながらも視線をさ迷わせた。
軽く図星だ。
「いや、まだ一緒にはいたいと思うけどな、あまり遅い時間まで藤堂を連れ回すわけにはいかないし」
しどろもどろに言い訳をする僕を見る藤堂は、徐々に不機嫌があらわになっていく。
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