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第334話 邂逅 15-4
「本当にそんなこと気にしてるんですか? 佐樹さんが心配しなくても、俺はそう簡単にどうにかなるような、柔な立ち位置じゃないですよ」
目を丸くして驚く藤堂に胸の辺りがモヤモヤとする。彼にとってはそんなことなのかもしれないが、僕にとってはそれは全然違う。
「わかってる、お前がどれだけ周りから信頼が厚いかってことは、わかってるけど」
呆れたような眼差しに思わず口をつぐんでしまった。しかしいまだ胸の内でくすぶる感情に、思いきり眉をひそめてしまう。
「ほんと、佐樹さんは根っからの教育者ですよね。すごくいい先生」
「嫌味かそれは」
「……ちょっとだけ。でも本音です」
ため息交じりで肩をすくめた藤堂の表情に、気づけば顔をしかめてしまっていた。しかしこれは多分お互いが持つ価値観の違い。互いに重きを置く場所がそれぞれ違うのだから、どうにも相入れない答えだ。
「そんなに難しい顔しなくていいですよ。俺が佐樹さんを一番大切だと思うように、佐樹さんもそう思ってくれてるってことなんでしょう?」
眉間にしわを寄せたままの僕に藤堂は、ひどく困ったような笑みを浮かべる。だけど僕を抱き寄せ、耳元で囁く声は優し過ぎるほど甘いものだった。
悔しいくらいにすべてを見透かされて、なだめすかされる。
「僕は藤堂が大人過ぎて、かなり悔しい」
「俺にもっと甘えて、頼ってくれていいですよ」
ゆるりと持ち上がった藤堂の口元が綻び、力んでいる僕の眉間に唇が寄せられた。僕は小さな音を立て離れたそれを視線で追いながら、背を伸ばし自分の唇をそこに重ねる。
「佐樹さん、可愛い」
「……っ」
ゆっくりと身体を離すと、至極嬉しそうに微笑む藤堂の顔が目の前にあり、否が応でも心臓が大きく跳ね上がってしまう。
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