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第339話 邂逅 16-4

「駄目だってわかっているのに、まだお前と一緒にいたい」  もどかしい――こんなに愛おしいのに、僕らのあいだには制約が多過ぎて息が詰まりそうになる。阻まれるほどに手を伸ばしたくなってしまう。  恋に恋している。そんな状況なのかもしれないが、そうだとしても僕の中に生まれる初めての感情に翻弄される。 「佐樹さん、ご飯はなにが食べたい? 明日の分も作り置きしましょうか」 「お前と一緒なら、なんでもいい」  ゆっくりと歩き出した藤堂の背中が、ほんの少しぼやけた。極自然に寄り添ってくれるその優しさが、たまらなく胸に染みてくる。僕は自分がこんなにも我がままで、我慢が利かない人間なのだと初めて知った。いや、相手が藤堂だからなのかもしれないが、いままでして来た恋愛はなんだったのかと、自身を疑う。  適当な気持ちで傍にいたつもりはない。けれどこんなに必死にはならなかった。 「運命ってあると思うか?」 「……それって、俺と佐樹さんのこと?」  振り返り、ふっと笑った藤堂の表情に胸が締めつけられる。いつもの自分ならそんなものは信用しない。でもいまはそれもあるんじゃないかと思った。 「明日きんぴらが食べたい」 「ん、また渋いとこに来ますね。じゃあそれの材料も一緒に買って帰りましょう。どうせ佐樹さんちの冷蔵庫は空っぽでしょ」 「余計なお世話だ」  目の前に現れた煌々とした光を放つ二十四時間のスーパーに向かい、二人でのんびりと歩く。自然と繋いだ手は離れてしまったが、不思議と物足りなさはなかった。

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