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第340話 邂逅 17-1
二人で買い物袋を携えて帰宅すると、藤堂は少し遠慮がちに部屋へと上がり、一瞬リビングの中に視線を走らせた。そんな様子に僕は首を傾げながらも、彼を促しキッチンへと足を向ける。
「とりあえず弁当以外は冷蔵庫に入れていいか」
「そうですね」
晩飯はすぐに食べられるよう、スーパーの惣菜店で折に入った弁当を買った。けれどそれ以外にもきんぴらの材料や、牛乳や食パン、ハムに卵やヨーグルトなど、普段から出来合いの惣菜にお世話になっている僕には縁のないものが買い物袋に収められている。
最近の僕の食生活は昼に藤堂が宣言通り弁当を持ってくるようになったので、以前と比べると格段によくなっていた。しかしそれ以外の朝と夜は相変わらずで、それを見越され先ほどの食材というわけだ。
「朝はあれでいいですけど、今度から昼のついでに夜も作りましょうか。あの準備室に小さい冷蔵庫ありましたよね」
袋の中身を手早く片付けながら、藤堂は背後に立つ僕を振り返った。
「え? そこまでしてもらうのはさすがに気が引ける」
「いっそ毎日作りに来てもいいですけどね」
うろたえた僕に藤堂はにやりと片頬を上げて笑う。それは二者択一と言われているようなもので、僕は小さく唸ってしまった。
毎日一緒にいられる時間が増えるのは嬉しいが、忙しい藤堂に毎日来てもらうのは申し訳なさ過ぎていくらなんでもそれは選べない。
「昼のついでなら……でも毎日じゃなくていいぞ」
けれどまた少し藤堂との接点が増え、距離が縮まるのだという浮ついた気持ちは抑えようがなかった。
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