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第341話 邂逅 17-2

「じゃあ来週から」 「……ん」  しかしそれを見透かされたのか、あたふたとぎこちない動きでやかんを火にかけた僕に目を細め、藤堂は小さく肩を揺らして笑う。そしてその視線に僕が口を尖らせれば、冷蔵庫の扉を閉め立ち上がった藤堂の唇がその口先に触れた。 「可愛い」 「火、危ない」  驚いている隙に身体を抱きしめられ肩が跳ねた。それを誤魔化すよう、ほんの少し身じろぎ藤堂を見上げると、再び柔らかな感触が過ぎる。 「もう、お前しつこい」  一気に熱くなった顔を俯かせ、目の前の藤堂の身体を押し退ければ、至極楽しげな笑い声が響いた。 「お茶、入れるからあっちに行ってろ」  いまだ笑っている藤堂をキッチンから追い出すと、思わずシンクの端に手をつき肩を落としてしまった。対面式のカウンターキッチンの向こうで、大人しくソファに座った藤堂は、まるで悪戯好きな子供のような顔をする。それは無邪気そうに見えるけれど実際は企みがたっぷりとありそうだ。  ため息交じりに食器棚からカップと急須を取り出せば、それと同時に湯の沸いたやかんに呼ばれた。 「さっきからなにを見てるんだ」  お茶の入ったカップと弁当の袋をテーブルに置きながら、僕は一人ぼんやりとリビングを眺めていた藤堂に首を捻る。その声にふっと我に返ったように藤堂が目を瞬かせ振り向いた。 「いえ、特に意味はないですけど」 「うちそんなに散らかってないぞ」 「そうですね。必要最低限って感じ」  肩をすくめた藤堂の言う通り、基本的に家の中は必要最低限だ。

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