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第343話 邂逅 17-4

「そうですね、あんまりこういうのはないです」 「ふぅん、うちはいい加減ソファを取っ払おうかと思ってるくらいなのに」 「佐樹さんコタツが似合いそう」  そう言ってゆるりと笑みを浮かべる藤堂が、頬杖をつきながらこちらをじっと見る。しかしその表情の意味がわからず目を瞬かせると、ますます藤堂の笑みが深くなった。 「なんだ?」 「いえ、こんな風にのんびり佐樹さんと過ごすのは、初めてだなぁと思って」 「そうか?」 「そうですよ。学校でも二人っきりはよくあるけど、佐樹さんあんまり落ち着かないみたいだし」 「そうか」  言われてみればそうかもしれない。学校にいる時は、二人きりでいるとどうしても周りを気にしてしまう。いくら準備室が本校舎から離れていて、人が来ることが少ないとはいえ、いつ何時やってくるかわからない。それに二人で出かけても、結局は人目があるのであまり気が抜けない。 「たまにこうやって家でのんびりするのも、悪くないな」 「そうですね」  緩んだ頬は恐らく完全に藤堂に気取られているだろうが、毎日は無理でもたまにはこうした時間を作るのも悪くないとそう思った。藤堂が学校に通っているあいだは、一緒にいられる時間は長くても、お互い気を抜ける時間はわずかしかない。 「さて、さっさと食べるか」 「味わって食べてくださいよ。義務じゃないんですから」  浮つく気分を誤魔化しながら弁当のふたを開けると、それを見ていた藤堂に思いきり顔をしかめられる。けれどその表情は素知らぬ顔で見なかったことにして、僕は割り箸を持ち弁当の前で手を合わせた。 「いただきます」  ほんの少し弁当は冷めかけていたが、なぜかそれはいつもよりも美味しいと感じた。

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