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第347話 邂逅 18-4
俯いた僕の頬を撫で、目尻に浮かぶ涙を拭う藤堂の指先に、茹だるみたいに顔が熱くなる。それを誤魔化すよう頷けば、ふいに顔を覗き込まれそうになり、僕は思わず顔をそらした。
「佐樹さん?」
「見なくていい、いま顔、ひどい」
真っ赤になっている顔を見られるのも気恥ずかしいが、正直いまはそれ以上に涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃだ。
「可愛い」
肩が揺れ、藤堂がふっと笑った気配を感じた。それと同時か、ふと柔らかな感触と香りが鼻先を掠める。それに驚いて目を瞬かせれば、啜る鼻をハンカチで拭われた。
「汚いから、いい」
「こんなのは洗えば済むことでしょ。それよりちーんして、早くこっち向いて」
「ち、ちーんって、子供扱いするなよ!」
楽しげに笑う藤堂にムッと眉をひそめハンカチを掴むと、僕は鼻先を覆いながら顔を上げて彼をジトリと睨んだ。
「目が真っ赤」
「うるさい!」
しかしそんな僕を満足そうに見つめ、藤堂はいまだ涙が浮かぶ目尻に口づけてくる。
「くすぐったい」
思わず目を閉じて肩をすくめれば、唇は瞼に触れ小さなリップ音が響く。
「佐樹さんは泣いた顔も可愛いね」
「……! 馬鹿」
一瞬腰が抜けそうになり、慌てて身を起こして藤堂の肩を押すが、意地悪く笑った彼の腕はそれを許してはくれなかった。
「お前のそういうの、心臓に悪い」
二人の距離が縮まるたびに、自分を見る彼の優しい目や触れる手、触れる唇が甘くなっていく。そしてそれを感じるたび、胸を締めつけられて――苦しくて、彼が愛おしくてたまらなくなる。
「今日は、ずっと傍にいてもいいですか?」
耳元に甘やかな声音で囁かれて、身体が震える。
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