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第349話 邂逅 19-1

 初めて二人きりで過ごした夜はとても静かで、安らぎを感じた。以前のような不安はなくて、いつの間にか眠りに落ちていた。そして目覚めた時に隣で眠る藤堂の寝顔を見て、自然と笑みがこぼれてしまった。いつもより少しだけ幼いあの顔がまた見られて、すごく幸せだと思った。 「藤堂、もう昼になるぞ」  勢いよくカーテンを引くと、それに遮られていた光が部屋の中に広がる。射し込む光から逃れ、深く布団を被るその姿はまるで幼い子供みたいだ。  無理やり起こすのは忍びないと思いながらも、僕は藤堂の肩を布団の上から強く揺すった。けれどそれを嫌がるように身じろぎして、藤堂は頭さえも布団に潜らせてしまう。そしてそんな反応に僕は、思わずため息をついてしまった。 「半分起きてるんだろ?」  うたた寝などで眠りが浅い時はすぐに目を覚ますのだが――自分で朝が弱いと言っていただけのことはある。一度熟睡してしまった彼を起こすのは、本当に至難の業だ。それは以前に実家に泊まりに来た時に体験済みだ。 「完全に起きるまで、最低三十分はかかるもんな」  ため息交じりにそっと布団の端から様子を窺えば、そこには眉間にしわを寄せ、目をつむる藤堂の顔があった。 「お前の低血圧はバイトと勉強のし過ぎだ」  普段からひどい低血圧で寝覚めが悪いらしいのだが、藤堂の場合は完全に不摂生な生活リズムが原因だ。いくらバイトと勉強の両立のためとはいえ、この年頃で睡眠時間が平均五時間は少な過ぎる。  人の食生活をずさんだと言うが、藤堂の生活も大概だ。

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