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第350話 邂逅 19-2

「とはいえ、そろそろ起きないとな」  今日は土曜日なので夕方からバイトがあるはず。寝かせておいてやりたいとは思うのだが、一度家にも帰らなくてはならない。僕は心を鬼にしつつ、再び藤堂の肩を揺すった。 「藤堂、起きろ」 「……ん」  ひたすら揺すり続ければ、小さな唸り声が聞こえて来た。また寝入ってしまわぬよう、僕はさらに強く肩を揺する。すると布団が大きく揺れ、その中で藤堂の身体が動いたのがわかった。 「起きたか?」 「……した」 「ん?」  くぐもった声に首を傾げれば、寝起きで掠れた返事が返ってくる。 「……起きました」  そろりと布団の中を覗くと、眠たげな眼差しがこちらを見上げた。しかしそれを見た僕が声を上げて笑った途端、不服そうにその目が歪む。 「佐樹さん、元気ですね」  もぞもぞと布団から這い出てきた藤堂は、いまだ眠気が覚めていないのか、枕を抱き身体をうつ伏せたままこちらを見ていた。けれど寝起きでローテンションな藤堂の頭を撫でれば、彼はふっと口元に笑みを浮かべる。  しかし笑った藤堂に油断していると、急に伸びてきた腕に引っ張られ倒れそうになる。 「ちょ、なにす……」  その勢いに僕は慌てて身を固くするが、抵抗虚しく寝返りを打って身体を仰向けた藤堂の上に僕は落ちた。 「おはよう佐樹さん」 「おそようだよ、馬鹿」  僕の身体を抱きしめ楽しげに笑う藤堂にため息をつくと、僕はこの腕からの脱出を試みた。けれど身体に力を込めれば込めるほど、抱きしめる腕の力も強くなる。

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