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第369話 予感 3-1

 ずっと傍にいるからとそう優しく囁かれるたびに、嬉しくて幸せで胸がいっぱいになる。そして彼の緩やかな鼓動と温もりを感じるたびに安堵する。でもそうしているうちにどんどんと自分の弱さが露見して、このままでは本当に藤堂がいなければ生きていけないんじゃないかと、少し怖くもなった。けれど深くは問いたださずに大丈夫だと、心配はいらないと何度も言葉にして強く抱きしめてくれた藤堂に少し救われた。  藤堂の後ろ姿を見た瞬間、朝に見た夢を思い出して急に不安でたまらなくなった。だからまたどこかへ消えてしまいそうで、僕は胸が苦しくなってしまったのだ。 「……女々しい」  そんな自分の弱さに嫌気がさして、胸の辺りが次第にムカついてくる。自分はこんなにも弱い人間だっただろうか、このままでは藤堂まできっと不安にさせてしまう。けれどそう思いながらも、藤堂の優しさに甘えてしまう自分がいた。  最悪だ――。 「先生! 今日それ何本目?」  自分の情けなさにうなだれたのと同時か、力の入った指先からふいに鈍い音が響いた。 「え?」  その音と背後から聞こえた声で我に返り、僕は慌てて後ろを振り向く。こちらを窺うやや呆れた視線とどこか心配げな視線は、ここが教壇の上だということをはっきりと思い出させた。 「あー、悪い」  彼らの視線に戸惑いながらも、ことごとく折れたチョークが並ぶ箱を目にすると、重たいため息が漏れてしまった。

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