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第371話 予感 3-3

「……ん、まあ」  確かに生徒たちのその気持ちはわからなくはない。あの先生が作る問題は難しくて自分でも遠慮したいと思う。とはいえテストはテスト。僕が作るものが簡単だと言われても困る。 「なんで西岡先生じゃないの」 「ん、先生が今週末にある創立祭の実行委員会の顧問だから、テストを作る時間が取れないんだ」  不満だらけの顔に苦笑いをしてそう言えば、ますます大きなブーイングが起きた。 「文句ばっかり言うんじゃない。そんなこと言ってると次の試験で嫌がらせしてやるぞ」  木野先生は年の功か博識で授業も楽しいと評判がいい。なので決して悪い先生ではないのだが、やはりどうにもテストだけは敬遠されがちのようだ。 「創立祭って、結局私たちはなにするわけでもないんですかぁ」 「んー、そうだな。生徒は午前中だけだし、校長先生のありがたい話聞いて。あとはほら、卒業生でバンドデビューしたなんとかってやつ」 「先生、その言い方おっさんくさい」 「うるさい。どうせおっさんだよ」  ここにいる子たちから見れば、十分おっさんだ。反論の余地はないが、ムッと目を細めれば皆一様に笑い出す。 「嘘嘘、先生若いって」 「……覚えてろよ」 「うわぁ、職権乱用」  先ほどからあれこれと声を上げていた生徒たちに冗談交じりにで目配せすると、目を丸くしながら苦笑いを浮かべた。

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