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第373話 予感 4-1
生徒たちから逃れ廊下へ出ると、階段の傍で背後から声をかけられた。聞き覚えのあるその声に振り返れば、三年の学年主任である新崎先生がにこにこと笑みを浮かべ立っていた。
「西岡先生お疲れ様」
「お疲れ様です」
自然と横に並んだ新崎先生に僕が会釈を返すと、お互いのんびりと階下へと歩を進める。いつも絶えない柔和な笑みと温和な眼差しそのままの、穏やかな性格の新崎先生。彼は自分の親に近い歳のせいか一緒にいるといい意味で気が抜ける。
思い返せばここへ赴任してから、ずっとお世話になりっぱなしの先生だ。
「最近調子はどうですか」
「悪くはないです」
「そう、それはよかった」
僕の短い返答に小さく何度も頷きながら、新崎先生はさらに目元のしわを増やし笑みを深くした。でもそれは自分と先生にとっては相変わらずのやり取りだった。僕がここに来たばかりの時も、結婚した時も、彼女を亡くした時も――変わらぬ調子でそう聞いてくれた。
新崎先生は昔から変わらず温かい人で、本当にしみじみするくらいのいい先生だ。昔といま、変わったところがあるとすれば少し増えた白髪くらいか。
「西岡先生が元気だと、生徒たちも元気ですね」
「え? そうですか?」
思い出し笑いのように肩を震わせた新崎先生に首を傾げれば、再び何度も頷きますます楽しげな表情で僕を見つめた。
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