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第374話 予感 4-2
「三年生は教科担当から西岡先生が外れたのを随分、残念がっていましたよ。二年生は授業がわかりやすくて楽しいと、一年生は先生が一番親しみやすいと言っているそうです」
「あ、ありがとうございます」
思いがけない賛辞の言葉にうろたえる僕よりも、新崎先生のほうが自分のことのように至極嬉しそうな顔をする。言われた僕はなんともむず痒く、照れくさい気持ちで胸がいっぱいになった。
「それに、うちのツートップ」
「ツートップ?」
「峰岸と藤堂がよく懐いてるようで」
「そ、そうでしょうか」
新崎先生の口から出てきた名前に少し心臓の辺りがひやりとした。けれど動揺した僕を知ってか知らずか、どもる僕に新崎先生は優しげな視線をくれる。
「峰岸は生徒会に入ってから少し性格が円くなりましたが、最近はさらに角がなくなりましたよ。藤堂もいままではあまり人に意見を求めるタイプではなかったけれど、近頃は進路の相談をちゃんと持ちかけてくれるようになりました」
「……」
しみじみと語る新崎先生はいま藤堂のクラス担任で、一年の頃は藤堂と峰岸の担任だった。ふと思い返せば数ヶ月前の二人を僕はよく知らない。いまでこそなんの違和感もなく話をし笑いあう藤堂も峰岸も、僕はほんの少し前までよく知らなかった。
「来年辺り、またクラス持ってみませんか?」
「え? あ……考えて、おきます」
「はい、そうしてください」
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