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第380話 予感 5-4

「峰岸の愛情ってほんとにひねくれてるな」 「会長はあれで実は優しいから」  ぽつりと呟いた僕の独り言に野上がふっと小さく笑う。 「まあな。野上は峰岸好きか?」 「好きだよ。会長は俺の憧れだもん」  無邪気に笑う野上に思わず肩の力が抜けてしまった。ちゃんと見抜いていたのかと納得する面と、気づいてなさ過ぎる無防備さに苦笑いが浮かぶ。  しかし周りに茶化されたり怒られたりする野上のフォローをしながら、小言を言う柏木も、それを峰岸がのらりくらりとかわしていくのもいつものことだ。 「お前は小舅かっつーの。七緒が大事なら、もうちょっとそっちに気を回せばいいだろ」 「……そんなこと、会長には関係ないです」 「あ、そ」  口ごもり言葉尻が小さくなる柏木の声に、肩をすくめた峰岸は横柄な態度で目を細めた。 「会長、あんまりみーくん苛めないでよ」  さすがにこう毎回では、いつも疎いと言われる僕でもそこにある感情に気づくと言うのに――のんびりした野上の声にため息をついた峰岸と、ふいに目が合った。 「苛めてねぇだろ。噛みつくのはこいつ」 「……」  椅子の背もたれに身体を預けふんぞり返る峰岸に、まっすぐと指をさされ柏木は口をつぐむ。どうやら今日は峰岸に軍配があがったようだ。 「なんだかんだで甘いんだよな」  柏木はあまり峰岸が構いたがる性格ではないけれど、少しだけ藤堂に似ている。サラサラとした綺麗な黒髪や落ち着いた光を宿す切れ長の目。小柄で華奢な印象以外は並び立つと兄弟みたいだと周りからもよく言われるくらいだ。 「お前はほんと口ばっかり達者だよな」 「会長には負けますけど」

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