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第381話 予感 5-5
それに峰岸自身も気づいているのだろう。鼻先で笑いながらも峰岸は柏木に対しどこか苦手意識があり、攻撃的な部分が一歩引く時がある。普段は言い澱むことがない峰岸が、時折ふと言葉に詰まるさまは見ていると不思議な感覚で面白い。
「みーくん勇者だねぇ。会長に進言できる強者はみーくんくらいだよ」
「七緒、ファイル三冊追加するぞ」
「自分の仕事、七緒先輩に振らないでください」
どうでもいいことでああでもない、こうでもないと騒ぐ峰岸と柏木。二人のあいだでへらへらと至極楽しそうに笑う野上。なにやら色んな感情がそれぞれの内にあるのだろうが、見ていると可愛らしく思えて和む。
残りの四人を追加すればさらにこの部屋は賑やかなものになるが、普段はきちりとした生徒会役員たちの高校生らしい子供っぽさが垣間見られて、この場所は案外居心地がいい。けれどふとよぎったそんな想いは寂しさも心に滲ませる。
「……寂しいか」
肩の荷が下りると思っていたけれど、実際はこうして峰岸たちと接しているうちになんとなく寂しいという気持ちが湧いてくるのだ。この先もう会えなくなるというわけではないが、いまのように接しあうことはきっと極端に少なくなるだろう。
「おい、なに年寄りが孫みるみたいな顔してんだよ」
「え?」
「ニッシー、おじいちゃんみたいだよ」
いつの間にかまた集まっていた視線と響く野上の笑い声で我に返れば、弧を描いて飛んできた紙くずが僕の額にこつんとぶつかった。
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