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第383話 予感 6-2
けれどまったく痛くも痒くもない指の感触になぜだか不思議な感覚がして、僕はじっと峰岸の顔を見つめ返してしまった。
「あんまり可愛い顔して見てると喰うぞ」
僕の視線に戸惑ったのか峰岸は一瞬だけ苦笑いを浮かべると、指を離し僕の頭をおもむろに撫でる。ほんの少し残る違和感に僕が首を傾げれば、今度は椅子を引き寄せられ尻を撫でられた。
「大胆にセクハラするな」
「……」
僕の文句に目を細め小さなため息をつくが、峰岸は人の言葉など耳に入っていないのではと思うほど遠慮なく触り続ける。そんな無遠慮な手を払おうと身体をよじれば、囁きにも似た小さな声で峰岸が呟く。
「センセが幸せオーラ出しまくりなのが悪いんだろ」
「は?」
思わず聞き返してしまいたくなるほどの小さな声だったが、ふとその声の小ささや言葉の意味に気づきじわりじわりと顔が熱くなった。
「センセ、前より雰囲気柔らかくなったな。壁が取れたっつーか。まあ元々、生徒には八方美人なとこあったけど」
「そ、そんなに違うか?」
同じようなことを新崎先生にもなんとなしに言われたばかりだ。そんなに他人から見てわかりやすいのだろうかと、思わず心臓が跳ねる。峰岸につられ小さな声で問えば、意地悪げな眼差しを返され鼻先で笑われた。
「わかる奴にはわかるんじゃねぇか?」
「わかる奴?」
「身近の親しい人間にはわかんだろ。あんたのことよく見知ってんだし」
「……ふぅん、でもお前とそんなに親しい覚えないぞ」
ニヤニヤと笑う峰岸にちょっとした悪戯心で仕返しすると、ふいに目を細めさらに笑みを深くされた。
「へぇ、そういうこと言うか。そうかそうか、俺の愛情感じてねぇつーの」
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