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第389話 予感 7-4
生徒会の役職は生徒会長一人、副会長一人、会計と書記が二人ずつがうちではフルメンバーだから、人数を補う生徒会補佐が加わるのは少し珍しい。しかも一年生から。
「うちの父の弟なんです」
「そうか、実家暮らしだったな」
いつだったか間宮は上に出来のいい兄がいて肩身が狭いと、ぼやいていたことがあった。柏木の父親か、なるほどと頷けるような気がした。しかしふぅんと、納得しながらマグカップの珈琲をすすりかけ、野上の言葉に思わずむせた。
「ニッシーって男受けいいよね」
「……っ」
吹き出しそうになった珈琲はなんとか堪えた。手元の書類が茶色に染まるのはなんとか防げたが、気管に入りかけた珈琲が痛い。
「会長でしょ、マミちゃんでしょ、英語の飯田でしょ。あ、藤様もニッシーお気に入りだよね」
無邪気に名前を上げていく野上の口を塞ぎたい衝動にかられる。藤様と言えば、下級生のあいだで王子の次によく使われる藤堂のあだ名だ。
「あら? それなら同性も異性もですわね。西岡先生が好きな方は結構多いんですのよ」
いまだ咳き込む僕の背をさすり、鳥羽は僕の顔を見つめてにこりと笑う。そのなんでも知っていそうな顔は、正直怖い。
「センセ、随分と敵が多いなぁ」
「それはこっちが責められることなのかっ」
ぽつりと呟き、ふっと目を細めた峰岸はどこか虫の居所が悪そうだった。お門違いな不服を申し立てられても困る。視線を合わせる峰岸と鳥羽のあいだに、不穏な空気が流れているのは気のせいにした。
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