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第391話 予感 8-2

 けれどなんだっていきなりそんなことを聞くのだろうか。つい先ほどまでまったく違うことでぶつくさ言いながら怒っていたのに。 「なんだ? 急に進路相談か」 「いや、なんでセンセはいまここにいんのかなと思っただけ」 「意味がわからないぞ。なんだかいちゃいけないみたいな言い方だな」  いや、いないほうが峰岸にはいいのか?  肩の上に顎を乗せた峰岸がふっとなにやら複雑げなため息を吐くものだから、ますます意味がわからなくて困惑してしまう。 「バーカ、んなこと思うわけねぇだろ」  しかしそんな僕の心などすぐに読み取ってしまうのが、やはり峰岸のすごいところだ。目一杯きつく抱きしめていた腕を緩め、まるであやすみたいに肩を優しく撫でる。 「じゃあなんだよ」 「やっぱり俺と付き合おうぜ」 「はぁ?」  真剣な顔でなにを言い出すのかと思えば、驚き過ぎて言葉が続かない。なんだか今日の峰岸は変だ。生徒会室でもなんとなく違和感があっておかしいと思っていたけれど、いまは明らかにどうかしてる。 「ちょっと待て、峰岸離せ」 「センセは幸せになりたい?」  どこか胸騒ぎがするような、ただならぬ雰囲気に僕は慌てて峰岸の腕を振りほどこうと試みた。けれど逆にしっかりと峰岸に腕を掴まれてしまい、逃げ出すことは叶わなかった。それどころかじっとこちらを見る目が、あまりにもまっすぐ過ぎて、思わず怯んでしまう。峰岸はこんなに寂しい目をするような男だったろうか。 「お前は、なんて顔してるんだ」 「なぁセンセ、俺にしとけよ」

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