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第395話 予感 9-2

「それにしても相変わらずあいつは突拍子ないよな」  僕を呼びに来たという飯田と一緒に職員室へ戻り、会議室の鍵を所定の場所へ返した。そんな僕の後ろで飯田は珈琲をため息交じりですする。 「ん?」 「……だから、峰岸」 「ああ、ありがと」  ふっと鼻先を掠めた薫りに振り返れば、ほらと飯田に湯気立つ珈琲を差し出された。職員室の隅にある小さな談話スペースのソファに腰かけた飯田に習い、向かい合ったソファに座ると、飯田の口からなにやら重たいため息が吐き出された。 「西岡くらいだぞ。あいつを軽くあしらえるのって」 「そうか? 構え過ぎなんじゃないか。案外、峰岸って素直だしいい子だぞ」 「うわぁ、余裕の発言。絶対に俺らには言えない台詞だわ」  一見すると大人びていて取っつきにくいし、一言えば百は苦言が返って来そうな奴だけど。あれでいて一緒にいると、ああ、ちゃんと峰岸もまだ子供なんだなと安心する時がある。でも子供が大人にならなきゃいけない世の中なのかなと、藤堂や峰岸たちを見ているとそう思えてしまう時もある。 「まあ、なんて言うか……いまの子は聡いよな。僕らの子供の頃とはちょっと違って、少し急かされて大人になってる気がする。それってかなり悲しい気がするんだ」 「まあ、言っていることはわからなくはない」  頭を抱える飯田に僕は苦笑いで返すことしかできなかった。けれどそんな僕に飯田は目を丸くし、ソファの背もたれに思いきり身体を預け肩をすくめた。

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