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第398話 予感 9-5
二年の半ば頃まではまだ一緒にいたと三島が以前言っていたけど、それより前から少しずつ距離ができていたのか。
半ば過ぎと言えば、丁度峰岸が生徒会入りをした頃。峰岸は僕への藤堂の気持ちを焚き付け、やはりわざと自分から離れていった?
でもどうしても離れる必要があったんだろう。
「なんで藤堂の名前が浮上したのに、峰岸だけなんだ」
確かに峰岸は派手だし、ほかの生徒と比べても明らかに目立つ。けれど二人一緒にいたなら、それと遜色ないくらい藤堂だって目に留まっていたはずだ。
「言えないって、そのクレーム入れてきた保護者集団の筆頭が藤堂の母親なんだから」
「え、まさか」
「そのまさかだよ。峰岸と藤堂を引き離したくて、相手伏せてクレーム入れてきたんじゃないかって、一時みんなで頭抱えたんだからさ」
違う――僕の口からこぼれた「まさか」はそんなことじゃない。でも僕の心情など知る由もない飯田は不服そうに言葉を紡いでいく。けれどその言葉は僕には届かなかった。
藤堂は言っていた。いまもまだ両親との関係は解消されていないって。赤の他人同士みたいな関係だとも。それなのに母親が素行の心配なんてするだろうか。わざわざ学校に乗り込んで、そんな大袈裟な行動を起こすだろうか。
藤堂の知らないところでなにか起きているんじゃないか、そんな嫌な予感がしてまたあの夢を思い出してしまった。
遠く離れていく藤堂の後ろ姿を――。
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