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第400話 予感 10-2

「最近お前の大事なセンセはモテモテだぜ。ほっとくと悪い虫つくんじゃねぇ?」 「お前以上に悪い虫はいないと思うけどな」 「あ、そ、俺を当て馬にして周り牽制してるわけな。別にいいけど、お前がいいなら」  適当なふりして相変わらず察しのいい男だ。けれどそうでなければこんな厄介なのをあの人の傍に放置しておくわけがない。同趣の要素を持ち合わせる人間を傍に置いておくなんて、本当ならしたくはない。でも自分が常に傍にいて見守ってあげることも叶わない。ならば使えるものはなんだって利用させてもらう。  それでなくともあの人は無意識に多種多様な人間を集めてしまうところがある。しかもたちが悪いくらいに人好きする雰囲気で、昔から好意を寄せる人間があとを絶たない。 「でも、もし俺が本気になったらどうすんだ?」 「……ならない、だろ」  冗談交じりのその言葉に少しだけ心臓が跳ねた。言葉が少し詰まるように掠れてしまう。  自分の弱味を見せたがらないこの男は、普段は決して相手に本音を見せない。それなのに最近の峰岸はどこか無防備で、すっかりあの人に懐いてしまっている。本当に珍しいくらい。 「わかんねぇだろ?」 「ありえない」  彼をすごく大事には思っているかもしれない。でも多分きっと峰岸は彼に本気にはならないと思う。それは自分をまだ好きでいるという自惚れなどではなく、ただなぜかそんな気がする。いや、もしかしたら自分がそう思いたいだけなのかもしれないが、いま以上に二人の距離が近くなるはずはない。

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